詳説 2023年世界最優秀ソムリエ コンクール決勝のブラインド テイスティング

2023年2月12日、A.S.I.国際ソムリエ協会主催、第17回世界最優秀ソムリエ コンクールのファイナル 決勝戦がパリで開催されました。優勝は、ラトビアのレイモン・トムソン Raimond Tomsonsです。

優勝 Raimond Tomsons ラトビア
2位 Nina Jensen デンマーク
3位 Reeze Choi 中国

日本代表の岩田渉さんは5位、地元フランス代表の Pascaline Lepeltierは4位でした。

フランスで行われた第17回世界最優秀ソムリエコンクール優勝者 レイモントマソンと2位ニーナジェンセン、3位Reeze Choi
左からNina Jensen デンマーク、Raimond Tomsons ラトビア、Reeze Choi 中国  画像引用:Les Echos

優勝したレイモン・トムソン Raimond Tomsonsは、前回2019年ベルギーで行われた第16回世界最優秀ソムリエコンクールで3位。2017年欧州&アフリカ国際ソムリエコンクールで優勝している国際コンクールの常連。彼は、ラトビアのレストラン Vincentsで20年以上ソムリエとして働き、現在はラトビアの Barents Wine Collectorsのディレクターです。
因みに、今回2位の Nina Jensenは前回2019年ベルギー大会でも2位。2大会連続で2位となりました。女性初の世界最優秀ソムリエールも期待されていましたが、次回以降に持ち越しとなります。

上位3名で行われた公開決勝戦では、さまざまな課題が与えられ、3000人以上の観客を前に、約4時間に渡る熱戦が繰り広げられました。今回その一部、ワインのブラインドテイスティングや、ワインリストの間違い探し等をご紹介します。

ワインバー

白ワインのブラインド・テイスティング

白ワイン4種がグラスに注がれており、これをブラインド・テイスティングしてコメント。4分間。その後、2種類の石が渡され、石の名前、どのワインの地層の石かをあてます。1分間。

ブラインド・テイスティングに使用された白ワイン

1 Nik Weis Goldtröpfchen G.G. 2021    
Mosel, Germany
2 Dom. Wachau Riesling Federspiel Loibenbey 2021
Wachau, Austria
3 Alheit Vineyards Monument Semillon 2021
Franschhock, South Africa
4 Riccitelli Semillon 2021
Rio Negro, Patagonia, Argentina

 2種類のリースリングと2種類のセミヨンがお題。全て地元フランス以外で、ミレジムは2021年でした。

 最初に登場した中国代表 Reeze Choiは下記の様に答えました。  

1 オーストリア バッハウ グリュ―ナ・フェルトリーナ種 スマラクト 2018  
2 ドイツ ラインガウ リースリング種 2019 
3 サンセール ソーヴィニヨン・ブラン種 2019 
4 ブルゴーニュ マコン・ヴィラージュ シャルドネ種 2019

 1と2を逆に答えたら、かなり高得点だったかもしれませんね。

 2番目に登場したデンマーク代表 Nina Jensenは下記のように答えました。彼女はよく喋り、時間を使い切る人です。

1 サンセール ソーヴィニヨン種 2020  
2 シャブリ シャルドネ種 2019  その後ヴィオニエ種のコンドリュー2020?
3 ボルドー・ブラン ドメーヌドシュバリエ・スタイル ソーヴィニオンブランとセミヨン種 2017 4 軽いボルドー・ブラン ソーヴィニオンブランとセミヨン種  2017 

 4種類ともフランス以外のワインなのですが、彼女は4種類ともフランスワインとして回答しています。

 最後に登場したラトビア代表 Raimond Tomsonsは下記のように答えていました。彼の試飲やコメントはとにかく早い。4分間の持ち時間のうち、約2分半で終了。1のワインは10秒もかからず答えていました。

1 オーストリア バッハウ グリュ―ナ・フェルトリーナ種 2020   
2 ギリシャ ミュスカ種? 2021
3 ブルゴーニュ コート・ド・ボーヌ 1級 シャルドネ種 2018    
4 シャブリ シャルドネ種 2020

 ブドウ品種も生産国も全く当たっていません。当たっているのは、2番のミレジムだけ。

 1 のドイツ・モーゼルのリースリングに対して、2名がオーストリア、バッハウのグリューナー・フェルトリーナー種と答えています。2名とも即答しており、香りが似ているのかもしれません。3と4がセミヨン種のワインですが、品種の香りが明瞭ではないからか、皆さん苦労しています。

 全て2021年の白ワインで、最新ミレジムです。しかし、若干熟成した印象を試飲者に与える理由が何かあるのでしょう。光の影響や、サービス温度、抜栓後の時間変化でしょうか。

 石の質問です。答えは、粘板岩スレート Slateが1のワインの地層から。片麻岩 Gneissが3番のワインの地層から。3名共に白ワイン試飲の後に石を出されて、既に自分が答えたワインと石が一致しないのか、或いは石に関する知識がないからか、かなり困っていました。

スイス、レマン湖畔のブドウ畑

赤ワインのブラインド・テイスティング

 赤ワイン2種のブラインド・テイスティング。まずワイン1を3分で試飲とコメント。
 その後「ワイン1と同じワインだがミレジムが異なる」と明かし、ワイン2を試飲とコメント。3分。

1 Chateau Petrus 2012
2 Chateau Petrus 2003


中国代表 Reeze Choi
1 アメリカ、カリフォルニア、ナパヴァレー カベルネソーヴィニヨン 2016
2 1985

デンマーク代表 Nina Jensen
1 ボルドー、左岸、サンテステフ、クリュブルジョワ、2010 
2 1995 

ラトビア代表 Raimond Tomsons
1  ボルドー、左岸、サンテステフ、2005
2 1990 (1994 1989と言い、最後に1990に決定)

1番のペトリュス2012年に関しては、2名がサンテステフと答えています。この年独特の乾いた渋みをサンテステフの特徴と感じてしまうのかもしれません。

2番に関しては、かなり古いワインと3人供答えています。光の影響や、サービス温度、抜栓後の変化、ボトルのコンディション等もあるのかもしれませんが、最後に解答が掲示された際、1998年優勝の Markus Del Monegoが、「2003年のペトリュスは揮発酸が非常に高い。」と指摘していました。それで3人供古酒と答えているのでしょう。

グラスに注がれる赤ワイン

ワインリスト間違い探し

2分間で解答。市場の実勢価格に比べて微妙な場合、それも答えになります。皆さんどのぐらいできますか?

1. Krug Clos du Mesnil 1978 Champagne, France 4000 euros

2. Egon Müller Schwartzhofberger Riesling Auslese 1971, Saar, Mosel, Germany 1000 euros

3. Chateau Margaux 1982 Margaux, Bordeaux, France 1600 euros

4. Chateau Margaux 1983 Margaux, Bordeaux, France 250 euros

5, Tenuta San Guido Sassicaia 1969 Vino da Tavola (Bolgheri, Tuscany, Italy) 1000 euros

6. Vega Sicilia Unico 2001 Ribera del Duero, Castilla y Leon, Spain 400 euros

7. Graham’s Single Harvest Tawny Port The Artisan 1974 Douro,Portogal 3 litres 2000 euros

8. Wendouree Cabernet Malbec 1996 Eden valley, South Australia, Austraria 150 euros

9. 2003 Almaviva Puente Alto Aconcagua Valley, Chile 150 euros

10. Karuizawa 31 years old (1981) Cask #78 Prendre le Rythme Nagano, Japan 2000 euros

11. Martin Mills 24 years old 19 bourbon Buffalo Trace Kentucky, USA 5000 euros

12. Kweichow WuXing Moutai Three Great Revolution 1972
Maotai Town, Hunan, Province 15000 euros

ワインボトルとワイングラス

以下解答です。

1. Krug Clos du Mesnil 1978 Champagne, France 4000 euros

  クリュッグのクロ デュ メニルは1979年が最初のミレジムです。1978年は存在しません。

2. Egon Müller Schwartzhofberger Riesling Auslese 1971, Saar, Mosel, Germany 1000 euros

  Schwartzhofberger じゃなくて、Scharzhofbergerだそうです。wはいらないと。
  ドイツ語圏の人でないとちょっと厳しい質問ですね。

3. Chateau Margaux 1982, Bordeaux, France 1600 euros
4. Chateau Margaux 1983, Bordeaux, France 250 euros

  3も4も価格に問題ありだそうです。3は高すぎ、4は安すぎだと。
  4はわかりますが、3はどうなのでしょう。普通にありそう。

5, Tenuta San Guido Sassicaia 1969 Vino da Tavola (Bolgheri, Tuscany, Italy) 1000 euros

  サシカイアは1968年が最初のミレジムですが、1969年は生産されていません。

6. Vega Sicilia Unico 2001 Ribera del Duero, Castilla y leon, Spain 400 euros

  ウニコ2001年は生産されていないそうです。2001年はレゼルヴァ・エスペシャルのみ? 何かあったのでしょうか。この件は調べても確認できませんでした。

7. Graham’s Single Harvest Tawny Port The Artisan 1974 Douro, Portugal 3 litres 2000 euros

  3リットルのボトルはないそうです。そもそもこのクラスのポルトは、大きなボトルを見たことがありません。ポルトガルのワイン法規は調べてもわからないので、確認できません。生産者側がつくっていないだけかもしれません。

8. Wendouree Cabernet Malbec 1996 Eden valley, South Australia, Austraria 150 euros

  オーストラリアのカルトワイナリー、ウェンドリー 。Eden valleyではなく、Clare Valley。

9. 2003 Almaviva Puente Alto Aconcagua Valley, Chile 150 euros

  なぜこれだけミレジムが頭にきているのかはわかりません。 シャトー・ムートン・ロートシルトとコンチャイトロのジョイント、アルマヴィーヴァはAconcagua Valleyではなく、Maipo Valleyです。

10. Karuizawa 31 years old (1981) Cask #78 Prendre le Rythme Nagano, Japan 2000 euros

  消滅した軽井沢蒸留所のウイスキー31年熟成、1981年がここで出てくるとは思わず。実勢価格は遥かに高いです。

11. Martin Mills 24 years old 19 bourbon Buffalo Trace Kentucky, USA 5000 euros

  生産者がBuffalo Traceではなく、Heaven Hill distillers。

12. Kweichow WuXing Moutai Three Great Revolution 1972 Maotai Town, Hunan, Province
15000 euros

  中国を代表するマオタイ酒は湖南省Hunanではなく、貴州省Guizhou。

ワイングラスとワインのサービス

有名ワイナリー名 & ワイン名のクイズ Guess the wine

 画像から有名なワイン名&ワイナリーをあてるクイズ。1つのワイン名&ワイナリーにつき、5枚の画像・写真を順次見せられます。ワイナリーの建物だったり、オーナーの写真等。早く解答した方が高得点を得られます。

 
1 Jean Louis Chave Ermitage Cuvee Cathelin Côtes-du-Rhône, France
2 Robert Mondavi & Baron Philippe de Rothschild Opus One Napa Valley, USA
3 Pol Roger Sir Winston Churchill Champagne, France  
4 The Sadie Family Columella South Africa 
5 Case Basse Soldera Brunello di Montalcino Italy

まとめ

 正直、優勝したレイモン・トムソン Raimond Tomsonsが決勝の上記テストで圧倒した感じはしません。僅差だったのかもしれません。もちろん、決勝はサービス実技が重要ですし、予選での得点が加わるのかもしれません。フランス大会ですから、フランス料理とのマリアージュもあるでしょう。
 因みに決勝のサービス実技では、ボルドー格付けシャトー・ディッサン2016のマグナムや、シャンパーニュのドンペリニョン2013年が使われていました。

 皆さま如何でしょうか。知らないワインや知識が結構ありませんか? コンクールに出る方は大変ですが、そうでない方は大いに楽しんでください。

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