ラ フォリー ド ヴージョ La Folie de Vougeotは、フランス、ブルゴーニュ地方にできた新しい宿泊施設です。この小さな建物は、ブルゴーニュ屈指の銘醸畑、クロ ド ヴージョ Clos de Vougeotの中にあり、地元でちょっとした話題になっています。
世界的に知られるフランス、ブルゴーニュ地方のワイン産地を旅した方は、おそらくクロ ド ヴージョの畑もご覧になっていると思います。約50haの面積を持つこの特級畑は、クロ Closと呼ばれる塀で囲われており、その中に3つの建物があります。
● シャトー ド クロ ド ヴージョ Chateau de Clos de Vougeot
12世紀に建てられたシトー派修道院の建物。現在歴史的建造物として公開され、ワイン関係の様々な催しでも使われています。観光名所で、建物内にショップもあり、多くの人で賑わっています。このシャトーを訪問された方も少なくないでしょう。
● シャトー ド ラ トゥール Château de la Tour
1890年頃に建てられました。現在ラベ Labet家がこのシャトーと約5.5haのクロ ド ヴージョのブドウ畑を所有・耕作しています。約50haあるクロ ド ヴージョのブドウ畑は70人以上に分割所有されていますが、ラベ家が最大の所有者です。また、クロドヴージョのクロ内に醸造所がある唯一のワイナリーです。
ブルゴーニュ・ワインに詳しい方なら、この2つのシャトーはご存知でしょう。
写真手前がラフォリードヴージョ 後方の建物がシャトードクロドヴージョ
今日のお題は3つ目の建物。シャトー ド クロ ド ヴージョとシャトー ド ラ トゥールの間にある小さな建物です。これは、1893年から1904年頃、ネゴシアンのポール・マルティーニ Paul Martiniとその妻によって建てられ、「クロ ド ヴージョにあるパヴィヨン Pavillon(小さな独立した建物や別荘の意味)」と言われていました。この建物は謎めいていて、「何のための建物? 見張り小屋? 小作人の建物?」「今誰が使用?」等々、話題になっていました。長らく廃墟同然で、所有者すら不明瞭な時代もあったようです。ブルゴーニュ最高格付けのブドウ畑、グランクリュの中にある「恥さらし」と言われたこともありました。
写真:ラフォリードヴージョの建物の周りはグランクリュ、クロドヴージョのブドウ畑
2015年、ブルゴーニュのブドウ畑がユネスコ世界遺産に登録されたこともあり、この建物の再建が真剣に話し合われたようです。結局、隣接するクロドヴージョのブドウ畑を所有する2つのワイナリーが動きました。ボーヌの有名なネゴシアン、ジョセフ ドルーアンと、函館でもワインをつくる、シャトー ド ピュリニー モンラッシェのエティエンヌ ド モンティーユです。彼らが、ボーヌ在住のカナダ人Grégory Pellingの支援を受け、100年以上前の建物をリニューアルし、高級な宿泊施設となりました。2023年末の話です。
ブルゴーニュ地方には約30000へクタールのブドウ畑があり、歴史的に格付けがなされています。最高格付けグラン・クリュのブドウ畑は、約550ヘクタール。全体の僅か約2%のみ。このブルゴーニュ地方のグランクリュ ブドウ畑内の宿泊施設は、今回のラフォリードヴージョが初めてです。フランスの厳しい建築基準では、今後ブルゴーニュのグランクリュ畑内に新たな宿泊施設ができるとは考えづらく、唯一無二の場所となりました。
この施設は、宿泊の場合は2名まで。食事の場合は12名まで。ワイン試飲の場合は18名まで可能です。宿泊は1泊1800ユーロから。詳しくは下記のサイトをご覧ください。
ラ フォリー ド ヴージョ
La Folie de Vougeot
rue de la montagne 21640 Vougeot
https://www.la-folie-vougeot.com/
参考文献 LE CLOS DE VOUGEOT Jean-François Bazin , Laurent Gotti (2021)
DijonBeaune.fr
2024年1月記