ムルソー村でシラー種を新植 地球温暖化最前線

フランス ブルゴーニュ地方 ムルソー村にある ドメーヌ ベルナール ミヨ Domaine Bernard Millotは、2022年3月、ムルソー村の斜面下部のブドウ畑にシラー種を植えた。地元新聞が写真入りでこれを伝えている。

ドメーヌ・ミヨのエミリアン・ミヨ
画像引用:Bien Public

2010年にドメーヌを継いだ エミリアン ミヨ Émilien Millot は、ムルソー村北側の斜面下部、ブルゴーニュ・レジョナル・クラスのブドウ畑0.25haにシラー種を新植した。D974の道路に近い場所。「2020年は酷暑と渇水の年。出来上がったワインは美味しいが、ピノノワール種向きの気候ではなかった。長期的に考えると、今の品種が合わなくなると懸念している。地球温暖化はリアルな話で、未来へ向かって準備をする必要がある。そして自分はシラー種が好きだ。」とその理由を説明している。シラー種は南フランスを代表するブドウ品種であり、ブルゴーニュ地方では使用されていない。

南フランスの代表的な品種であるシラーは、ブルゴーニュの南に位置するボジョレーではかなり試されている。例えば、ボーヌのルイジャドが所有するシャトー デ ジャックは 、シラー レ ジャック Syrah Les Jacques というワインを2018年から一般に販売している。これは、2015年にムーラン ナ ヴァンのブドウ畑に植えたシラー種からつくられたワインである。ブルゴーニュより北にあるアルザスでは、ドメーヌ・ルネ ミュレがシラー種をアルザス グランクリュの畑に植えている。だから、いずれ誰かがブルゴーニュで試すだろうと言われていたが、白ワインで有名なムルソー村が最初だとは誰も想像しなかっただろう。

今回エミリアン・ミヨ がシラー種を植えた畑名は書かれていないが、地元新聞の写真から、植えた場所は Les Corvées の畑だとわかる。ムルソー村のD974道路の東側にあるこのブドウ畑は、シャルドネを植えてもブルゴーニュ・ブラン・シャルドネを名乗れない。コトー ブルギニオン シャルドネになるので、アリゴテ種を植えている生産者が多い場所。0.25haというのはそれなりの面積で、普通にブルゴーニュ・アリゴテをつくれば1500本は生産可能。近年ムルソーの生産者のアリゴテは需要が高いが、それを放棄してまでシラーを植える辺り、彼がかなり「本気」なのがわかる。

エミリアン・ミヨは、ビアンコ・ジャンティル Biancu Gentile 種を0,5ha新植する計画がある。これはイタリアに近いコルシカ島で使われている品種。「コルシカでは8月上旬に熟すので、ブルゴーニュの気候ならば、いいタイミングで熟すはず。」と説明している。フランス最南端コルシカ島のマイナーなブドウ品種を、北に位置するブルゴーニュで植えるのは、かなり野心的な試みだ。ブルゴーニュよりもコルシカのワイン生産者の方が驚いているのではないだろうか。

地球温暖化が進む中、近年、ブルゴーニュでは新しい品種の試みが目立つ。ヴォーヌ・ロマネ村の著名生産者ドメーヌ モンジャール ミュニュレ Domaine Mongeard-Mugneretは、マルベック種をフラジェ・エシュゾー村の斜面下に植えている。この品種はフランス南西地方やアルゼンチンで知られたブドウ品種だ。そのワイン マルベック キュベ エム Malbec Cuvée M は日本でも流通しているので、試された方もいるだろう。また、シャサーニュ・モンラッシェ村の生産者アルマン ハイツ Armand Heitzは、ロワールやボルドーで使用されるソーヴィニオン ブラン種をコルポー Corpeau村(シャサーニュ・モンラッシェ村の東側にある)に植えている。こちらもパーセル アンテルディParcelle interditeの名前で商品化されている。

この様な新しいブドウ品種の試みは、AOC 原産地統制呼称の格付けは取得できず、ヴァン ド フランスVDFやIGPの格付けになる。伝統産地のブルゴーニュでは、研究機関等を除いて、新しいブドウ品種は殆ど試されることはなかった。今後はこの様な試みが増えるであろう。

2024年9月27日追記

上記のムルソー村に植えられたシラー種は、2024年9月24日に収穫されたようだ。地元新聞が伝えている。   Bienpublic le 27 septembre 2024

ドメーヌ・ベルナール・ミヨの名刺カード
画像引用:domaine bernard millo

情報ソース 
Bienpublic
https://www.bienpublic.com/economie/2022/04/17/planter-de-la-syrah-le-pari-du-vigneron-emilien-millot

2022年4月記、2024年9月加筆修正

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